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デング熱 日本の「力」期待…東南ア・南米で猛威 蚊の駆除剤やワクチン

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 東南アジアや南米でデング熱が猛威をふるう中、日本の製薬会社などがウイルスを媒介する蚊の駆除剤やワクチンなどを相次いで投入している。世界のデング熱感染者数は2023年に過去最多を記録するなど深刻さを増していることが背景にある。流行国では各社の製品や研究開発への期待が高まっている。(バンコク 井戸田崇志)

デング熱 日本の「力」期待…東南ア・南米で猛威 蚊の駆除剤やワクチン

5月上旬にバンコクで開かれた花王とアース製薬の駆除スプレーの発表会。蚊に吹きかける実演が行われた=井戸田崇志撮影

 花王とアース製薬は7月、タイで共同開発した蚊の駆除スプレー「アース モスシューター」を発売する。新製品は水と油をなじませる界面活性剤を使うことで、蚊の羽や体表面をぬらして飛べなくするのが特徴だ。化学合成成分を使用しておらず、殺虫剤に耐性を持つ蚊にも効くという。ベトナムやマレーシアでの販売も検討する。

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 武田薬品工業は23年にデング熱ワクチンを360万回分出荷した。タイやインドネシア、ブラジルなどで接種された。さらに今年2月にはインドの製薬会社バイオロジカルEと協業し、30年までに5000万人分にあたる年1億回分に供給能力を高める計画だ。

 富士フイルムは昨夏以降、タイとフィリピンで、デング熱ウイルスを検出できる抗原検査キットを医療機関に販売している。写真の現像で培った技術を応用し、ウイルス量が少なくても感染の有無が判断できる。

 世界保健機関(WHO)によると、23年のデング熱感染者は過去最多の650万人以上で、関連死は7300人以上に達した。現在、100か国以上で流行し、感染者の7割をアジアが占める。

 タイ政府によると、23年のデング熱感染者は前年比4倍、死者は6倍に急増した。温暖化や都市化に伴い蚊の生息域が広がったことや、コロナ禍が一服し、人の往来が活発になったことなどが要因とみられている。タイ政府は「デング熱は公衆衛生上の大きな課題だが、予防はできる」(疾病管理局のチャンタナ・パドゥントッド媒介性疾患部長)として蚊の駆除など予防に注力している。日本メーカーが蓄積してきた知見が生かせる場面が増えそうだ。

 訪日客の増加に伴い海外由来の感染症が日本で流行するリスクも高まっている。今後、治療分野も含めた感染症対策のさらなる推進が求められる。

 ◆ デング熱= ネッタイシマカなどの蚊が媒介する感染症で、熱帯、亜熱帯が主な流行地。ウイルスを保有した蚊に刺されることで感染する。有効な治療薬はなく、感染から3~7日後に発熱や頭痛などの症状が出る。重症化すると命に関わる場合もある。日本では23年、海外で感染し、帰国後に発症した患者が175人報告された。厚生労働省は東南アジアなどへの渡航者に注意喚起している。


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