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強制不妊「除斥期間」争点 最高裁…上告審弁論始まる

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強制不妊「除斥期間」争点 最高裁…上告審弁論始まる

最高裁に向かう原告ら(29日午前、東京都千代田区で)=須藤菜々子撮影

 旧優生保護法(1948~96年)に基づく不妊手術を強制されたとして、被害者らが国に損害賠償を求めた5件の訴訟の上告審弁論が29日午前、最高裁大法廷(裁判長・戸倉三郎長官)で始まった。高裁では、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する民法(当時)の「除斥期間」の適用を巡って結論が分かれていた。大法廷は今夏にも、賠償責任の有無などについて統一判断を示す見通し。

夏にも統一判断 見通し

 2018年以降、39人が「子どもをもうける自由を奪われた」などとして全国12の地裁・支部に訴訟を起こした。今回の弁論の対象となった5件の訴訟の原告は、1950~70年代に手術を受けた人やその配偶者らで、仙台、東京、大阪、札幌、神戸の各地裁に提訴。1審判決はおおむね旧優生保護法の違憲性を認めたが、いずれも除斥期間を適用して原告側の請求を棄却した。

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 原告側の控訴を受けた高裁判決も全て旧法を違憲と判断。さらに東京高裁や札幌高裁などの4件は「除斥期間をそのまま適用することは著しく正義に反する」として国に賠償を命じた。だが、仙台高裁は除斥期間を適用して請求を棄却した。

 この日午前に開かれた弁論で、大阪の原告側は「戦後最大の人権侵害を単なる時の経過で免責してよいはずがない」として、除斥期間の適用を制限するよう主張。国側は「除斥期間を適用しないのは極めて例外的な場合に限られるべきだ」と反論した。弁論はこの日で全て終わり、結審する予定。

 除斥期間は法律上の権利関係を安定させるため、2020年に改正法が施行されるまで民法に規定されていた。最高裁が「著しく正義に反する」として適用を認めなかったケースは2件にとどまる。

 全国優生保護法被害弁護団によると、一連の訴訟では地裁・高裁で20件の判決が出ており、11件で国への賠償を命じている。

法廷に手話通訳者…原告に配慮、点字版資料も

 最高裁はこの日の弁論で、原告側の要望に応じ、障害を抱える原告や傍聴人らに配慮した異例の対応を法廷の内外で行った。

 法廷内では聴覚障害者らのために、原告側や被告側の主張資料や、それぞれの発言の要約を映し出す大型モニター計6台を設置。原告側が手配した手話通訳者らも法廷内に入り、手話を使うなどして弁論でのやり取りを説明した。

 2人分しかなかった傍聴席の車いすスペースは12人分程度に拡大された。廷内に入りやすいよう、入り口の階段にはスロープを設けた。視覚障害者のために、傍聴希望者に配られる事案概要をまとめた資料は点字版も準備した。

 法廷の外では、聴覚障害者らをサポートするため、傍聴整理券の交付場所などに手話通訳者や筆談ボードを持った職員を配置した。

 旧優生保護法は、知的障害や視覚・聴覚の障害を理由とした不妊手術などを認めていた。全国で起こされた一連の訴訟では、多くの障害者が原告となり、地裁や高裁では傍聴を希望する障害者も多数に上っていた。


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